伊藤清徳先生による、第一回春芳堂塾のまとめをしたいと思います。
春芳堂塾とはなにか
春芳堂塾とは、トライデントコンピュータ専門学校で勤務されていた伊藤清徳先生(キヨっち先生)が主催するマーケティング講座です。主に卒業生の石黒さんを鍛えるという目的で開催しますが、先生の元教え子にも開放しようという試みです。僕は技能五輪の対策授業でお世話になりました。
Webマーケティングやコンテンツマーケティングという言葉の罠
Webマーケティングやコンテンツマーケティングという言葉が流行していますが、この言葉をそのまま解釈してしまうことは注意が必要です。そもそもマーケティングとは何かを理解する必要があります。Wikipediaには以下のように紹介されています。
一般的な企業活動のうち、商品・サービスそのものの企画・開発・設計やブランディングから、市場調査・分析、価格設定、広告・宣伝・広報、販売促進、流通、マーチャンダイジング、店舗・施設の設計・設置、(いわゆる)営業、集客、接客、顧客の情報管理等に至る広い範囲においてマーケティングミックスの4Pや4Cの活動が行われている。 企業活動のうち、対顧客視点での活動が行われない製造ライン、研究、経理、人事などの部門は、一見マーケティング活動とはやや距離があるが、顧客価値を生むという視点では組織が有機的に機能する必要があると考えられる。
つまり、ライン作業以外のすべての活動が実はマーケティングに当たります。例外もあり、トヨタの生産は「カイゼン」を行っているためマーケティングに該当します。「Webマーケティング」という言葉は、あたかもWebがマーケティング全てを支配しているかのような意味に捉えられるため、「マーケティングのWeb部門」という表現が適切というのが先生の意見です。
マーケティングで大事な視点
マーケティングにおいて大事な視点があります。それは、売るということよりも買うという点に着目するということです。例えばコーラを売るとします。会社側としてはコーラを売るための手段をまず色々考え始めると思います。しかし、その施策が本当に消費者に響いているのかを確かめることは難しいです。そこで、買うという視点をもち、消費者の行動を観察することでどの場面でどのような施策をしようか考えやすくなります。とにかく人を起点として考えていくことが大切です。
ペルソナ(想定顧客)を立てる際の注意
なにかサービスを打ち出す際、ペルソナ(想定顧客)を立てて、ターゲットを絞っていきます。しかし、ペルソナを立てる際に注意が必要です。
理想の顧客像は1%もいない。10人いればいいぐらい。
ペルソナは、立てた人の主観や理想が少なからず入ってきます。つまり、いくら調査して作ったとしても「このように行動してほしい」という理想が入るため、それに該当する人はかなり少ないです。なので考え方として、顧客を育てていくという観点が必要になります。つまり、企業が顧客を育ててペルソナに合わせていけば、サービスの効果を最大限にアピールすることができます。
顧客を分類する
顧客をペルソナに合わせていくために、まず顧客を分類します。顧客は以下の3つに分類されます。
- 顕在顧客・・・自社サービスに対して明らかに買いたい欲がある人。
- 準顕在顧客・・・自分の商品と競合していた場合、どれかから買えればいいかなという人。
- 潜在顧客・・・そもそもその商品が必要かどうか分かっていない。自分で一度購入した人も含まれる。
ペルソナは一見上2つに該当すると思われますが、潜在顧客も含めなくてはいけません。なぜなら、潜在顧客も育てていくことで理想のペルソナになりえるからです。例えばコーラを売ると仮定して3者に対するマーケティング施策を挙げてみると
- 顕在顧客・・・コーラの中でも自社のコーラを欲しいと思わせる。
- 準顕在顧客・・・ドリンクの中でもコーラを欲しいと思わせる。
- 潜在顧客・・・ドリンクを欲しいと思わせる。
このようになります。
行動分解をしてみる
マーケティング施策を考える際、「行動分解」という考え方で顧客の接点をまとめます。ワークショップで実際3者の行動分解を行いました。
潜在顧客・・・ドリンクが別に欲しくない
駐車場につく
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自動ドアの入り口に入る
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レジをちらっとみる
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雑誌コーナーに行く
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トイレに入る
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ドリンクコーナーをちらっと見る
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パンコーナーをチラッと見る
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おにぎりコーナーでおにぎりを取る
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レジに向かう
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タバコを頼む
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支払い終了
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お店を出る
<準顕在顧客・・・ドリンクが欲しい
駐車場につく
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手で開けるタイプのドアを開く
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そのままトイレに向かう
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雑誌コーナーを見る
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ドリンクコーナーを物色し始める
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ドリンクをとる
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パンコーナーでパンを取る
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スマホを見る
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レジに向かう
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支払いを済ませる
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お店を出る
顕在顧客・・・コーラがほしい
駐車場につき
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自動ドアで入る
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ドリンクコーナーへ行く
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コーラがある周辺を物色
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決まらないのでトイレに行く
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もう一度ドリンクコーナーへ行く
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コーラを取る
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おにぎりコーナーへ行く
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レジの唐揚げなど置いてあるあたりを見る
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レジで精算
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お店を出る
このようにお店に入ってから出るまでの一連の流れを洗い出していきます。そして、その行動ごとに「目立つ広告を出す」など、行動施策を書いていきます。次回はこの部分をもう少し詳しく行うそうです。
Webサイト、ブログ、SNSの活用
実は、Webサイト、ブログ、SNSの活用も顕在顧客、準顕在顧客、潜在顧客ごとに役割を分けることができます。
Webサイト・・・顕在顧客向け
- 情報は完全に整理されている
- 更新精度が低い
- 時系列に並んだデータにはならない
- 自社サービスなど商材紹介がほとんど
Webサイトは上記のような特徴を持ちます。顕在顧客のようなすでに自社サービスに興味を持っている顧客に対しては、情報が理路整然と並べられていればいいです。つまり、ちょっと背中を押す程度の情報を載せればいいということです。なので、「問い合わせがしたいから電話番号どこ?」などというニーズを満たす基本情報をしっかり明記することが重要になってきます。
ブログ・・・準顕在顧客向け
- あるまとまった時間を推敲しながら投稿
- カテゴリやタブで分類
- 情報は存在する(SNSとくらべて情報が流れない)
- 顧客との距離は遠い
- その分野のことを考えながら繰り返し更新
- 切り捨てられた情報も掲載できる
- 「こういう角度で写真が見たい」などニッチなニーズにも対応できる
ブログにはこういった特徴があります。顕在顧客より漠然としている準顕在顧客には、自社の商品をより良く発信していく必要があります。ブログはWebサイトに載せられないような細やかな情報を記載できるので、施策次第でぼんやり欲しいと思っている顧客を欲しいに変えることも可能です。そういえば僕もカメラを購入する前に、いろんな人のブログを回って使い勝手や作例を見ていた記憶があります。
SNS・・・潜在顧客向け
- ひらめきに近い投稿を繰り返す。
- 情報は消えていく
- 情報は整理されていない
- 顧客と利害関係はあまりない
- 他愛もない会話を通じて認識してもらう
- ちょっといいかもなと思わせる
- なんとなく関係を保つ
SNSは上記のような特徴を持っています。そういえばおじいちゃんの方眼ノートもSNS 発信で爆発的に売れましたよね。これは孫の何気ない一言が発端でした。商品そのものに価値を見出していない潜在顧客は、Webサイトにもブログにもわざわざ見に行くようなことはしません。そのため、SNSで流れてきた投稿に偶然惹かれたといった体験が効果的です。
さいごに
90分の講義内容でしたが、非常に濃い内容でした。顧客を3パターンに分け、それぞれの行動を分解、そして効果的な施策を打ち出していくためにはどうしたらいいのか、今後の講義が楽しみです!!
伊藤先生が激推ししていた本

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